ハイコンテクスト文化 - 日本語と英語のコミュニケーションスタイルの違い
日本人の中には西洋の人たちとコミュニケーションを取ることが苦手であるという人が 少なくありません。 その主な原因は、英語力 - 文字で見ればその語義は分かるが、自ら言いたいことを英語で表現できない点にあるものと思われます。 また
言葉で明確に示されていない背景や文脈から、こちらの真意を 想定してもらい、汲み取ってもらうことを期待する 日本流の "察する文化" を基本としたコミュニケーションから抜け出せず、欧米人との話しが 噛み合わないことも多いようです。
ハイコンテクストとは 文化人類学者のエドワード・H・ホール(Edward T. Hall)の理論における文化の区分の一つで、文化の共有性が高く、言語以外の表現(ジェスチャーんなど 人体が行う非言語メッセージ = 動作知)や、行間から相手の意図をくみ取り合う、日本人的な言語交流のことを指します。
情報には、明確な言語・数字・図表で表現された 形式知 と、人の心の中にある言語化されていない主観的な情報である 暗黙知がありますが、相手に伝えるためには 暗黙知を形式化に変換するプロセスが生じる。 日本人はこの変換作業に 慣れていないのだと思います。
私たちが英語を話す際、思いついた日本語を そのまま英語にしても、説明が十分でなく、相手に真意がうまく伝わらないことがよくあります。 日本語は 主語や、目的語、時制や冠詞をつけなくても 通じる言語であるため、言葉足らずになりがちな言語だという点に 英語学習の初期段階から留意することが大事であると思います。
そしてハイコンテクスト文化 = 日本語と英語のコミュニケーションスタイルの差異を埋めるための 英語表現法の工夫として、下記3点を紹介します。
(1) 文脈に頼らない説明を心がける
ローコンテクスト文化に対応する 英語表現力を目指す際、辞書や 百科事典に掲載されているような、文脈から切り離した 表現方法を、話し方の一手段として、自分の英語表現に加えることが まず有効です。
例) アメリカ人に "除夜の鐘" といっても、まずその習慣を知らないので、その場面を想像することが難しい。 このような場合、辞書にある説明的な語り口で、相手の顔色を見ながら、どこまで自分の英語が理解されているのかを確認しながら 説明する必要があります。
(2) 自分の感情や感想を 情報に加える
日本人のようなハイコンテクスト文化圏で生活する人は、自身の感情を伝える言語技術も弱い。 必ずしも感情を 言葉で伝えることを求めない文化圏にいる上、日本人は感情を表に出さないので、欧米人は日本人の英語を勘違いして受け取ったり、推測を誤ったりしやすいのです。 事実を正確に伝えることも必要ですが、英語の感情表現を積極的に取り入れるようにしましょう。
(3) 談話標識を用いる
話しの展開を相手が理解しているかを確認するためにも、接続表現だけでなく、談話標識を積極的に用いましょう。
上記3点、一つ一つは小さなことですが、これらを習慣化すると 今まで 15 words で話していたことを 30 words 位で話すように 英語発話のスタイルが変化します。 このように 話しに登場する単語数を増やすことが、"言わないと伝わらない" ローコンテクスト文化に対応するための 一歩となる。 そして スキルとしての第二言語の英語が、母語による思考にも影響を及ぼし始めるのです。
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