エピソード記憶の働きを 英会話に取り入れる
今回は 記憶の仕組みについての 復習から始めたいと思います。
私たちが 意図的に覚えたり、思い出したりできる記憶は、宣言的記憶(陳述記憶 / Declarative Memory)と 呼ばれます。 この宣言的記憶は 大きく2つに分かれます。 1つ目は 意味記憶で、英単語 (例: Apple) を 、日本語の "リンゴ" と セット(対連合)にして、暗記(記銘)し、その情報を長期記憶に保持し、思い出したい時に 情報を取り出せる(想起)ようにします。
もう1つの宣言的記憶である、エピソード記憶とは、体験によって得た記憶を言います。
例) 目覚ましをセットし忘れた → 寝坊した → 遅刻した → 上司に叱られた → 反省した。
このような 一連の出来事の順序を記憶しているものは、エピソード記憶の典型と言えます。 また、記憶したい内容を身近なものにこじつける "語呂合わせ" もエピソード記憶の一種であり、学習の際、私たちは 無意識のうちに エピソード記憶 を活用していると言えます。
エピソード記憶の特徴は、暗記による 意味記憶より、長期記憶に残りやすいという点です。 人間は 小学生までは意味記憶の力が強く 丸暗記が得意なのですが、青年期からは エピソード記憶の方が暗記しやすくなります。
この人間の記憶のメカニズムを知り、エピソード記憶を 有効活用し、英単語の 語彙ネットワークの形成を 試みることは 英語学習に大きな成果をもたらします。
語彙学習を記憶と関連づけ、ある語から次の語を連想する場合に、意味や綴り、発音、イメージ等が働くことを意識して、同じ センテンスに登場しやすい 単語を寄せ集めて グループ化すると、エピソード記憶となり 記憶に定着しやすい。
例えば 選挙に参加した人であれば、投票会場でどういう行動を思い出せるでしょう。
例えば 意味記憶の獲得では、"Vote = 投票する" と 記銘し、意味記憶として定着させる。 この場合、記憶上、文脈から独立していて、関連した 情報と紐づけされていないため、忘れやすく、また 想起にも 時間がかかるのです。
これを エピソード記憶として 記憶に定着させるためには、語彙ネットワークの中に 取り入れる作業が重要となります。
いつ 投票(Vote)するの → 選挙の日 (Election Day)
投票する場所は どこ? → 投票会場 (Polling Place)
誰が投票するの? → 有権者 (Registered Voter)
どうやって投票するの? → 投票用紙に記入する (Complete a Ballot)
このように その場面を思い出して、時系列に使う 単語を書き出し、グループ化し、語彙をネットワーク化すると、ストーリー記憶として長期記憶に定着し、潜在意識での 記憶の想起も可能になるのです。
一方、単語帳の目次を見て、アルファベット順に単語を Victory - Vote - Vulnerable と 意味記憶として 取り入れても、これらの各単語は 文脈上 つながらないのです。
"英語の筆記試験は 得意だが、英会話で自分の意見を話すのは 苦手" だという学習者の方は、意味記憶の獲得に力を入れた 語彙方略を 中心に行っていて、エピソード記憶に 落とし込んでいない可能性が高いと思います。
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