英語と日本語の間の 言語間距離の大きさ
日本人が英語が苦手な原因については、あらゆる人が あらゆる角度から、問題点や課題の根本的な原因を探求するための仮説を立て、持論を展開しています。 そして "学校の英語教育が実用的ではない" ことや、"アジア圏の文化的背景が言語に与える影響" などに その原因の一端があると 語られています。
ただ これは 1つの本質的な原因に起因するものでなく、複数の問題要素から構成されている。 さらにそれらの要素も、認知機能や 生理反応の個人差による部分が 大きいため、問題の特定は 困難であると思います。
この問題に関し、言語学の世界には 一つの指標となる 言語間距離 という概念があります。
これは ある言語と、別のある言語がど れだけ似ているかを示すもの。であり、その距離が大きい程、第二言語習得は困難になるというものです。 そして、日本語と英語の距離は遠い - 発音、文法、語彙において、ほとんど共通点がないからです。
例えば 同じ ラテン語から派生し、国同士が隣接する イタリアとスペインの言葉は、単語や文法の類似性が 大きく、親戚言語と言われることもあります。 ですから、イタリア人が スペイン語の基本を習得することは、それほど 難しくない。 また、スペイン人にも 同じことが言えると、言われています。
また 日本人にとって、韓国語は言語距離が近いので 比較的習得が容易 (韓国に旅行に行くと、驚く程 日本語が上手な人がたくさんいることに驚きます。)である一方、英語と日本語では、言語の系統が異なるため、距離が遠すぎる。 そして、類似性や、共有度合いが低すぎる場合、第一言語が第二言語習得に悪影響を与える?現象である、負の言語転移が生じやすくなるのです。
まとめ
- 言語間距離が小さい場合は、母語援用がはたらく。 その距離が大きい 場合は 母語干渉がはたらきやすい という仮説に基づいて、英語学習についてを考えてみましょう。
- ヨーロッパ言語と、全く異なる 日本語を話す私たちが、英語を習得するためには欧米出身の人よりも3倍以上の努力が必要であるとも言われています。
- 言語転移には、外国語の習得に有益な影響を与える 正の転移と、不利な影響を与える 負の転移があります。
関連する情報
ボトムアップ処理の リスニング (Bottom-up Listening)トップダウン処理による 英語の音声聴解 (Top-down Listening)
フォニックス (Phonics)
言語転移 (Language Transfer)
母語干渉 (First Language Interference)
認知言語学 (Cognitive Linguistics)