フォニックスを補完する ティーチング法について考える - TOP


この記事は MyPace English (MPE) の英会話講師向け 研修資料と 講師との対話の 一部を 抜粋・編集したものです。


フォニックス (Phonics) を補完する学習法


外国語や 海外の文化について理解を深めること、そして 海外の人々と、積極的に交流を図ろうとする態度を育成することを 趣旨に、小学校での英語必修化が始まりました。 そして、音声に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養うため、英語の4技能である "聞く・話す・読む・書く" をバランスよく学び、中学校での英語学習に繋げていくことを目的に 児童たちも英語の勉強に取り組むようになりました。


この 英語教育の低年齢化が進む中、フォニックスという 言葉が 一般的にも広がり始めています。
フォニックス (Phonics) とは、音声学 (Phonetics) の初歩知識を まとめた 英語音声学習教材のことで、発音と文字の関係性を 学べる。 また、英米の小学校などで行われている綴り字の読み方の指導法にも 使われていることから、英語塾での使用や、家庭用の学習教材として 日本でも 確実に 普及し始めています。


その一方、フォニックスの効果は 万能であると 思わせるような 商品や、広告が 増えたこともあり、その学習効果に 過剰な期待を寄せる ご父兄様も見受けられます。 フォニックスの良い点は、発音記号を用いずに、英語の調音方法が 学べること。 そして 単語の正しい発音を 聞きながら、暗唱する 音声学習が 比較的手軽に できる点にあると思います。


ただ、英語の発音は、音声面と 韻律的側面の両面から 学習する必要がありますが、フォニックスで 韻律を強調して教えることは 難しい。 そのため、日本人の英語音声習得に生じる 一番大きな 阻害要因である、韻律的母語干渉が 回避できない点に 留意する必要があると思います。


実際、フォニックスを使って英語を習っている子供たちは、(1) 英単語の 音声を聞いた後、オウム返しで声を出す。 (2) その後、その英単語(名詞)を 見て、その名詞を発音する。 (3) そして、綴りを見て その名詞を発音する。 この演習を続けていくと、子供たちの発話する 英単語は (1) → (2) → (3) と だんだんとカタカナ風の響きになってしまう。 これは 言葉のリズムは生理的要素であり、日本語のモーラ拍リズムの頑強性が原因であり、この 母語干渉を 軽減させる 明示的な 学習が必要になると思います。


引用: "モデルの音声を復唱させた場合に正しく認知・産出できていると思われる 単語についても、ペアワークや スピーチなどの場面で自動が自律的に発音する際には、うまく発音できていない様子も見受けられる。"  出典: 小学校英語における音声の指導 - モデルの復唱で身に付くことと、身に付かないこと - 鹿児島大学法文教育学域教育学系 准教授 石原 知英氏 他


大袈裟に表現すれば、フォニックスは 右手だけ(音声学だけ)で、ピアノを弾くようなもので、左手(音韻論)の基礎が 学習に反映できない と言えるかも知れません。 そして 英語の発話法を 音声学的側面からだけ 追求しても、英語特有の 強勢拍リズムは 生まれないのです。


MPE での キッズ英会話 では、フォニックスで習う 英語の母音音素の前後に 子音を置き 音節を作りながら、音節の 強弱と 長短に 着目しながら、音節区切りの 単語発音から、音声的にも 韻律的にも 正しい発音を 子供と一緒に追求していきます。 文字にすると、"当たり前" の指導法のように、思えるかもしれません。 ただ、この点に関しては、多くの言語学者が 指摘しているのですが、実際にこの指導は グループレッスンでは、実施することが 不可能に思えます。
引用: "母音・子音などのセグメント(単音)は、かなり後になっても獲得が可能かもしれないが、プロソディー(韻律)的側面の獲得限界はかなり早く訪れる可能性があるようだ。 場合によっては6~7歳頃かもしれない。" 出典: 國學院大學学術情報リポジトリ 出世直衛氏


まとめ

- フォニックスは、音素の仕組みを学習を、発音記号を見ずに 発音を習得できるという点で 便利なツールと言えます。

- フォニックスは音声学よりのアプローチで、音韻論までカバーできない点に 留意しましょう。

- 英語の綴りを フォニックスで教えることが できるのは、強勢のある音節だけであり、弱母音は その法則に当てはまらない点が多いことにも 注意しましょう。


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