モーラ拍リズム - 日本語特有の拍子の特徴を知る
日本人は、英語の発音が聞き取れないと言われますが、正確には、"日本人は英語のリズムが 聞き取れない" と置き換えるべきでしょう。 日本語を母語とする日本人は、英語の音声の聞き取りも苦手ですが、韻律(リズム)を、明示的な訓練なしに 聞き取ることが ほとんどできないのです。
まず、日本語には日本語の音声リズムがあり、英語には英語の音声リズムがあるのですが、日本語と英語の韻律(リズム)構造は大きく異なります。 そして、言葉のリズムは生理的な要素であり、人は母語のリズムに無意識のうちに *同期させてしまう。 これが 日本人が 聞いた英語を、カタカナ風にリズムを直して 話してしまう 大きな原因です。
* 同期: 関東の人が、関西の人と話しをすると、無意識のうちに関西弁になってしまう(関西弁に同期する)。 アメリカ人と英語で話す際、聞いた音を、カタカナ風に発音して返答してしまう。(知識として有する日本語に同期する = 内導)英語の発音矯正を行うためには、まず、日本語特有の モーラ拍リズム についての、基礎知識が必要です。
世界中にある言語は、それぞれが異なる音声リズムを有していますが、それらを大別すると、音の強弱を伴う 🔗 強勢拍リズム(英語やドイツ語)と、音節拍リズム(イタリア語や スペイン語) の2つに分類されます。 日本語は音節拍リズムに属しますが、その中でも下位範疇として考えられている、モーラ拍リズム に、分類されます。 モーラ拍リズムは、音の単位(モーラ)の1つ1つを同じ長さで発声する 特殊な音声であり、例)雨上がり(あめあがり)の5文字を、5個の音節と捉え、5文字の長さを全て 同じ時間の長さで発話する、モーラの等時性(等時的な拍音形式)が特徴となります。
チ・ヨ・コ・レ・イ・ト のように、指折り法で数えられる 言語は、世界でも日本語だけと言われ、子音+ 🔗 母音 のリズムの規則性が明確であり、リズム感に乏しいという印象を与えるのが、日本語の特徴です。
そして、その等時性が頑強であるため、強勢音節内の母音長は長く、無強勢音節内の母音長は短く、隣接母音長の差が生まれやすい、英語の強勢拍リズムが、聞き取れない。 そして、英語の短い音節に、余分な母音を足して、🔗 音節を伸ばしてしまうのが、日本人の英語発音の特徴であり、母語(日本語)風に発音を、無意識のうちに調整してしまうことを、母語干渉と言います。
このモーラ拍リズムの特徴を、再確認してから、英語の強勢拍リズムの習得に移行しましょう。
まとめ
1. 日本語は高低の言語、英語は強弱の言語と常に考え、日本語のモーラ拍リズムと、英語の強勢拍リズムの違いを、意識します。
2. 日本人が無意識のうちに発話する、カタカナ発音の特徴を、論理的に説明できるようにしましょう。
3. アメリカ人にとっても、日本語の正しい発音を習得することは 難しい。 それは 日本人の英語学習の場合と同じで、負の母語干渉が 必ず起きてしまうからです。
The negative transfer of the stress-timed rhythm is often observed in the production of Japanese words by English speakers. Therefore, strong and weak syllables alternate and the stressed syllables tend to be longer.
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